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世にもすばらな物語 弐

ハギヨシ「人は常に後悔をしながら生きています」

ハギヨシ「その度合いはその時にもよりますが、それが自身の運命を決定づけられるようなことだったら長い間後悔することになります」

ハギヨシ「やっぱりああしておくべきだった。そう思った時には後の祭り、後悔先に立たず」

ハギヨシ「でも、本当に悪いことだけだったのでしょうか?」

ハギヨシ「案外、それこそが自分にとって最良の選択肢だったのかもしれませんよ」

ーー

司会「阿知賀が土浦女子から跳満直撃!土浦女子の連荘を止めたああ!」

実況「小鍛治選手が高校の公式戦で跳満以上のダメージを食らったのはこれが初めてですね」

司会「初出場ながら快進撃を続ける阿知賀!このまま優勝候補の土浦女子までも倒して先に進むのか!?」

晴絵(さっきまではやられっぱなしだったけど、一矢報いたね。このまま流れに乗ってけるといいんだけど)

健夜「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

晴絵「ポン!」

晴絵(よし、これで一筒を捨てて満貫テンパイ。この局ももらった)タン

健夜「ロン」ゴゴゴゴゴゴ

(777)萬(1444999)筒(中中中)

晴絵「っ!?」

晴絵(四暗刻地獄単騎!?しかも直前に6萬を切ってるってことは6777での5-6-8の三面張を捨てて!?)

晴絵(でもまだ後半戦で取り返せるはず……)

はやり「」コオオオオオオ

理沙「」カッ

健夜「ロン」

理沙「ツモ」プンスコ

はやり「ロン☆」

司会「先鋒戦終了―!阿知賀が土浦女子に反撃ののろしをあげたのもつかの間、それ以降あがることができず一人沈みの状態です!」

晴絵「っ」ガバッ

晴絵「はあ、っはあ」

晴絵「また、あの時の夢か。」

――

晴絵(阿知賀女子学園麻雀部が全国行きを決めてから一週間、奈良に戻ってからはあの日のことが夢に出ることはなかったんだけど)

晴絵(おそらく天江衣という魔物クラスのオーラに久しぶりに触れたことが原因だろう。もっともあの日のは天江衣の比じゃなかったけど)

晴絵(それに、天江衣と対局した直後の様子が昔の私を見てるようであったってのもあると思う。穏乃を筆頭にすぐ立ち直ってはくれたけど、もしあれが練習試合でなかったら……)

晴絵(いや、余計なことを考えるのはよそう、それより今日にはここを発つんだ。少しでも練習させてあげないと)

晴絵(さて、もう時間だし起きないとね)

???「晴絵、起きてる?」

晴絵「ああ、今行くよ」

晴絵(憧が起こしに来てくれたのかな)

ガチャ

晴絵「おはよ」

???「おはよう、また寝坊?」

晴絵「……?」

晴絵(あれ?私もう奈良に帰ってたっけ?昨日そんな飲んでないはずなんだけどな)

???「どうしたの?そんな不思議そうな顔して」

晴絵(なんで望がいんの?)

【あのときあの場所であれ啼いてなければ】

望「じゃあ朝食を食べながらでいいから今日の予定を聞いてね。今日はわかってると思うけど鳳凰位のタイトル戦よ。相手は」

晴絵「ちょ、ちょっと待って!」

望「なに?なんか質問でもあった?」

晴絵「質問というかいろいろ突っ込みたいところあるんだけど、まずタイトル戦ってどういうこと?私今教え子たちと長野行ってたはずなんだけど」

望「まだ寝ぼけてるの?だから言ったじゃない明日試合あるんだからお酒は控えなさいって」

晴絵「いや、寝ぼけてなし大マジなんだけど」

望「晴絵がボケを引っ張るのは珍しいわね」

晴絵「いや、だから」

望「はいはい、いいからとりあえず朝食を済ませて身支度して、タクシーを呼んでおくから」

~国立競技場~

晴絵(言われるがまま来てしまったけど、ここまじで国立競技場じゃん。なにこれドッキリ?)

案内「では赤土選手の控室はこちらになります。試合が近くなったらアナウンスしますので、それまでおくつろぎください」

晴絵「は、はあ」

望「ほら、いい加減シャキッとしなさい」

晴絵「と、言われても」

晴絵(ドッキリにしては手がこみすぎだよな。一応昔プロやってたとはいえそんな有名でもない私をわざわざここまで金かけてはめるメリットもないだろうし)

晴絵(なんなんだろ?しかも長野でも奈良でもなくここ東京みたいだし)

アナウンス『試合開始まで15分を切りました。選手は対局室に入場してください』

望「じゃあ晴絵、頑張ってきてね」

晴絵「う、うん」

晴絵(とりあえず対局室に来たけど)

大沼「……」

咏「よろしく~」

晴絵(ガチでトッププロじゃないっすか。え、ちょっと待って私今からこれと打つの?)

咏「あと一人か、遅いね。知らんけど」

大沼「……そうだな」

晴絵(勘弁してよただでさえきついのにもう一人とか、頼む藤田プロとか、トッププロにしてもせめて若手の戒能プロとかに)

健夜「よろしくお願いします」

晴絵「」

晴絵(やばいこれ、やばいなんてもんじゃない。下手したら生きて帰れないよ)ガタガタ

大沼「……」タン

咏「……」タン

健夜「……」タン

晴絵(あ、でも意外とツモはいい。この局はなんとかなりそう、後が怖いけど)タン

大沼「……」タン

咏「……」タン

健夜「……」タン

晴絵(よし、五巡目でタンピン三色テンパイ)タン

大沼「……」タン

咏「……」タン

晴絵「!そ、それロンです7700」

咏「うわ、ついてねー」

――

晴絵(その後も好調子は続き、トップはとれなかったが、これだけのメンツを相手に+3の二位で終わることができた)

望「お疲れ晴絵。惜しかったわね」

晴絵「倍満の親被りが痛かったね」

望「まあまだ若いんだし次の時には優勝できるわよ。朝は変だったからどうなることかと思ったけどよかったわ」

晴絵「あ、そうだ望!そのことなんだけどさ」

晴絵(私は望にすべてのことを話した。段位戦など出た覚えがないこと、阿知賀が復活してそこで監督をやって全国に導いていたこと。当然ながら望は不思議そうな表情をしていた)

晴絵(いや、そこまではいいんだけど、次に望から出た言葉は予想のななめ上をいくものだった)

望「阿知賀の麻雀部は復活もなにも、あんたが全国優勝した時からずっと全国行ってるじゃない」

晴絵(あの後実際に大会の情報を見たところ、本当に阿知賀は私がインハイに出た年以来、ずっと奈良の県代表として全国に出場していた。それだけでも大分私の記憶と違うことなのだが、さらに調べると、もう一つ大きな違いがあった)

晴絵「私が、あの日、準決勝でトラウマを刻み込まれた日、私は小鍛治プロに勝ってる……?」

優勝校―阿知賀女子学院

――

晴絵(それから、なにがなんだかわからないまましばらく生活することになった。どうやら私はここでは当時弱小だった阿知賀を優勝に導いたエースとしての実績を買われプロになり、あろうことか小鍛治プロに肩を並べるトッププロをやっているらしい)

晴絵(連日、大きな大会に参加し打ったり、近くの市民大会の解説として呼ばれたり大忙しだ)

晴絵(なぜか元の私より雀力が格段にあがってるらしく、トッププロ相手にも十分戦えている)

晴絵(元の世界ではトラウマの対象でしかなかった古鍛治プロとは、どうやらライバルとされているようだ。何度か直接対決の機会があったが、毎回接戦になるらしい。その接戦を見るためにその対局がある日の視聴率は跳ね上がるとか)

晴絵(ちなみに、望は私のマネージャーをやってくれてるそうだ。ありがたいけど神社はいいのだろうか)

晴絵(よくわかんないけど、ここの私は大分強いみたいだし有名みたいだし、案外悪くないかもね)

望「今日の予定はWeekly麻雀TODAYの取材と、クラブのスポンサーの方の会食、ハンデマッチよ」

晴絵「了解」

望「取材の方は午後一時に迎えが来るそうよ」

晴絵「まだ時間あるな」

望「そうね。ねえ晴絵、久しぶりに、その」

晴絵(私自身にはそんな記憶はないからなにもしていないのだが、望はそれが不満のようで時間があるとすぐに甘えてくる。まあ正直悪い気はしない)

取材「ではクラブでの今シーズンの意気込みを教えてください」

晴絵「トップ率4割目指します」

晴絵(こんなビッグマウスをたたいても問題ないって楽しい)

スポンサー「いやあ君のおかげで最近はクラブの勝率、ひいてはわが社の営業成績が好調だよ。さ、遠慮せず食べたまえ」

晴絵「ではいただきます」

晴絵(あっちでは画面の向こうでしか見られなかったウン万円の料理とウン十万のワインがずらりと)

晴絵「ロン、飛びで終了ですね」

晴絵(私は1000点、スポンサーさんは10万点スタート、私のみドラ一発なしのハンデマッチ。向こうは安手で流すだけで圧勝のはずなのに結果は飛び終了。こっちの私強すぎ)

晴絵(まだそんな経ってないけど、こっちはこっちで楽しいし、別にこのままでもいいかな~。なんて)

望「今日の予定はインハイ準決勝の解説ね」

晴絵(インハイ……。ってことは久しぶりにあいつらに会えるな。いろいろあって疲れもたまってるけど、あいつらに会えば疲れもふきとぶ)

晴絵(そう、思っていたんだ)

実況「まもなく始まります準決勝。先鋒の選手が続々と入場していきます」

実況「まずは二連覇中の白糸台からはインハイといえばこの人、昨年度個人戦覇者宮永照選手!」

実況「つぎに関西最強の名門校千里山女子から園城寺怜選手。彼女は去年までは団体戦出場記録はありませんが、江口セーラ選手をおしのけエースポジションに立っています」

実況「そして北九州最強の高校、新道寺女子からは花田煌選手。二回戦では宮永選手に大きなリードを許してしまいましたが、今日はリベンジなるか」

実況「最後に奈良の阿知賀女子、阿知賀といえば今解説に座っている赤土プロの母校でもありますが、その阿知賀からは」

晴絵(きた……。玄、元気でやってるか?)

実況「小走やえ選手。彼女は奈良個人戦で一位をとっています」

晴絵「……え?」

実況「どうかしましたか?赤土プロ」

晴絵「い、いや阿知賀の先鋒は松実玄じゃ」

実況「松実?聞いたことありませんね」

晴絵「そんなはずないって。ほら、次鋒にもまつ、ってあれ?」

晴絵(今になってやっと目を通した選手一覧。そこにはどこにも松実の文字はなかった。松実だけじゃない。穏乃も、憧も)

晴絵(何度確認しても見つからない。唯一見つかった見慣れた名前は鷺森灼だけだった)

――

望「どうしたの晴絵?今日の解説。松実って奈良での知り合い?」

晴絵「知り合いもなにも、望だって知ってるだろ?松実館のふたり。昔から憧と仲良かったじゃないか」

望「松実館……、ああそういえばそんな旅館もあったわね。でも憧とその子は面識なかったと思うわよ。学年も違うし」

晴絵「何言ってんだよ。確かに学年は違うけど阿知賀こども麻雀クラブd」

晴絵(言いかけて、私は気づいてしまった)

望「阿知賀こども麻雀クラブ?」

晴絵(そう、私があの日負けていないということは)

望「なにそれ?」

晴絵(阿知賀こども麻雀クラブがつくられる理由もなかったということだ)

~奈良~

晴絵「穏乃!」

穏乃「あ、いらっしゃいませ。って赤土プロ!?どうして私の名前を?」

晴絵「そんなことはどうでもいい。穏乃、お前麻雀は打てるか?」

穏乃「麻雀ですか?たまにテレビで見ますけど、そんな詳しくはないですね」

晴絵「部活で打ってたりは?」

穏乃「いえ、うち強豪ですし初心者の私がついてけるとも思わないので登山部に入ってます」

晴絵「……そっか」

――

憧「あれ?晴絵じゃん、めっずらし。お姉ちゃんは一緒じゃないんだ」

晴絵「ああ、今日は仕事をキャンセルしてきたからな。望は方々に謝りに行ってもらってるよ」

憧「なんでそんなこと……」

晴絵「なあ憧、お前ってどこに進学して何部に入ってる?」

憧「?晩成行って、部活入らず家の手伝いしてるけど、どうしたの?」

晴絵「麻雀は打てるか?」

憧「お姉ちゃんに教えてもらったから一応は打てるけど、強くはないわよ」

晴絵「……ありがとう」

――

玄「いらっしゃいませ」

宥「お荷物をお持ちいたしますね」

晴絵「いや、いいよ。それより聞きたいことがあるんだが」

玄「なんでしょうか?」

晴絵「君たちって麻雀は打てる?」

宥「ええ」

晴絵「どれくらい打ってる?部活には入ってる?」

玄「部活には入ってませんね。お客様が遊戯室で打たれるときに数合わせにお呼ばれすることがあるのでその時に打つくらいです」

宥「麻雀をされたいのでしたら、遊戯室にご案内いたしますが」

晴絵「いや、いいよ……」

晴絵(この世界では、灼以外は麻雀をほとんどやっていない。それも当然だろう。きっかけがないのだから)

晴絵(灼がやっているのはおそらく私がプロをやっているからだろう。私がやめたときにあの子もやめたと言っていたから、私がやめないならやめる理由ができない)

晴絵「なんだよこれ、なんだってんだよ!」

晴絵「確かにこの世界は楽しいよ!トッププロだし、お金はあるし、あの古鍛治プロと同等にやりあえてるし!」

晴絵「でも、あいつらが私の周りにいないどころか、麻雀をやってすらないなんて、こども麻雀クラブのつながりがないなんて、そんなの寂しすぎるだろ……」

晴絵「こんなんなら、私は弱くてもいい、小鍛治プロにぼろ負けしててもいい、ただあいつらを見守ってるだけの方がよっぽどいい!」

晴絵「あの日負けたのは悔しかったけど、でも、それがあったからこそあいつらと会えたんだから、それ以上の楽しさがあった!」

晴絵「私は、今も、今を作り出してくれた過去も捨てたくない!あいつらとまた麻雀がしたい!」

晴絵「私は穏乃が、憧が、玄が、宥が、灼が!阿知賀こども麻雀クラブが、大好きだから!」

――

???「ハルちゃん起きて」

晴絵「うん?望?」

???「だれそれ?私を忘れちゃったの?」

晴絵「あら、た?灼だよな!?間違いない!灼だ!」

灼「寝ぼけてる?」

晴絵「いや、もう完璧に目覚めてる」

灼「そう。龍門渕さんが朝食の用意ができたって。みんなはもう食べ始めてる」

晴絵「すぐ着替えていくよ」

晴絵(ああ、やっぱりこっちの方が落ち着く)

晴絵(だって)

穏乃「おはようございます!」

憧「遅いわよ晴絵」

宥「スープあったか~い」

玄「おいしいね、お姉ちゃん」

灼「さ、ハルちゃんも早く食べよ?」

晴絵(こいつらがいるから)

カン
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