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菫「プレゼントは……」

ギリギリ間に合いました。
好きなキャラなのに当日の昼まで0字だったとかあるわけないじゃないですか。 

ーーー
 暇だ。夏休みの課題は終わったし、他の三年生と違って推薦が決まっているから受験勉強をしなきゃいけないわけでもない。部活が終わってしばらくはなにもない時間を有意義に満喫していたのだが、こうもなにもない時間が続くとさすがに飽きが来る。退屈は人間をダメにするとは本当のことのようだ。
 あまりに暇なので菫で暇をつぶそうかとラインを送ってみる。しばらくして返信がきた。
「ちょうどいい。暇なら手伝ってくれ」
 なにをなのかはわからないけれど、こうして寝っ転がってるだけよりはマシなのでそうすることにする。

「で、いったいなんなの?」
真夏の日差しに苦しみながら待ち合わせ場所の喫茶店に着くと菫が深刻そうな顔をしていた。
「なにって、今日が何の日か知らないのか」
きょとんとした表情で返された。
「今日? なんかあったっけ?」
「知らないのか。全く照はこれだから」
やれやれと肩をすくめる菫。
「ではヒントをやろう。誕生日だ」
「誕生日って言ったって虎姫にはいないよね。部員全員の話しとかされてもさすがにわからないよ?」
「部員でもない」
「なおさらわかるか」
 しかもそれをさも当たり前に知ってるかのように話されても。当たり前ってことは有名な人なんだろうか。それに菫の深刻そうな顔はなんだったんだろうか。
「こうさん。わからない」
「本当にわからないのか」
 いやそんな地球外生命体を見るような目で言われても。いやこれで本当に常識だったら申し訳ないけれど。
「……いいか。なら教えてやろう。今日は」
「うん」
「松実宥さんの誕生日だ」
「知るか」

「知るかとはなんだ知るかとは!」
「いやだって知らないよそりゃ。他校の、インハイで二回麻雀打っただけの娘でしょ?それも私個人は打ってないし。それを知ってて当たり前のように言われても」
 そもそも誕生日だからなんだって話だ。
「う、まあ言われてみれば確かに」
「それより、その松実さんの誕生日がどうしたの?」
「おおそうだ。それが問題なんだ」
 ようやく本題に入れる。
「実はな、その……なにかプレゼントとか送ろうかと……」
 ああ、そういうことか。
「で、私に選ぶの手伝ってくれってことね」
「そうなんだ! どうも私一人ではしっくりこなくてな」
「でも、今日選んだところで遅くない?速達で送ったところで早くて明日の夜とかだよ」
「ああそれは問題ない。私が直接持っていくからな」
 東京―奈良間ってそんなノリで行ける距離だったっけ。
「一応聞くけど、奈良までどれくらいかかるか知ってる?」
「新幹線で四時間半程度ださきほど調べた」
 四時間半。
「往復したら九時間かかるわけだけど大丈夫?」
「往復?しまった、そこまでは頭になかった」
 片道の四時間半は頭に入ってそれだったのか。
「さすがに日帰りは難しいと思うけどその様子じゃ宿は取ってないみたいだね」
「……なんてことだ。私としたことがそんなことを見落としていただなんて」
「まあ、幸い松実さん家は旅館なんだし泊まっていったらいいんじゃないかな」
 菫が目から鱗という表情を浮かべている。というか実際に目から鱗がでた。コンタクトだけど。
「天才か。あまりに感動してコンタクトがとれてしまった」
 つけてないから知らないけどコンタクトってそんな取れ方するものなの。
「よし、これで問題はなくなった。後はプレゼントだけだな」
 あ、本気だったんですね。

 というわけで菫と買い物にやってきた。
「方向性は決まってるの?」
 来たはいいのだが、どの系統の店に入るのかすらわからないので取り合えず聞いてみる。
「それが、いろいろ考えはしたもののどれもしっくりこなくて。それで今日にいたるまで決まらなかったんだが」
「なるほど」
「とりあえず花束だけは予約してあるんだが」
「それで十分じゃない?」
「そんなわけがあるか。宥の誕生日だぞ!? 仮に花束で祝おうと思ったら花屋ごと買い取っても足りん!」
 誕生日ってそんな重苦しいものだっけ。
「ところで菫」
「なんだ?」
「それだけ気合入ってるってことは、つまり菫は松実さんのことが好きってことでいいんだよね」
「な!?」
 顔を真っ赤にして慌てふためく菫。かわいい。
「い、いや決してそういうわけでは。いやだからって宥のことを嫌いなわけではないし。だからそこは勘違いしないでほしいというか」
「あーはいはい。わかってるから大丈夫」
「そ、そうか? ならいいんだが」
 つまり好きで仕方ないから誕生日に精一杯のお祝いをしてあげたいけれどなにをしていいかわからず困ってると。
「んー、相手の立場になってなにもらったらうれしいか考えてみるとか」
「ふむ、宥は寒いのが苦手だから……。防寒グッズとか?」
「夏なのに?」
 売ってるのだろうか。カイロくらいなら薬局にはありそうだけど。
「ううむ。では他には……」
「じゃあ一般論で、好きな人から何もらったらうれしいかとか」
「す!? いやだから私と宥はそんな」
「はいはい、でも好きな人かあ」
「お、お前はどうなんだ」
「私? そうだなあ」
 ……咲からなにかもらえるなら
「なんでもうれしい」
「参考にならないな」
「だめだ、咲からなら例え消しゴムのカスだろうと嬉しいと思えてしまう」
「それプレゼントじゃなく捨てといてくれって言われてるだけじゃないのか」
「でもそうだね。強いてあげるとしたら……咲のパンツとか」
「暑さで頭やられたか?」
「いやごめんさすがに咲自体のが嬉しい」
「やっぱり大丈夫じゃないみたいだな。今日はもう帰って休んでくれ」
 菫がかわいそうな人を見るような目で見てくる。不思議だ。なにがあったのだろう。
「全く、お前に聞いた私がバカだったよ。本人とか……ん?」
「どうしたの菫?」
「そうか、その手があったか」
 嫌な予感しかしない。

 吉野駅の改札を通った。現在時刻は19時半、もうお誕生日会は始まっているだろうか。急がねばなるまい。
 焦りながらロープウェイを待つ。早く、一分一秒が惜しい。宥。

「お姉ちゃんこっちこっち」
「う、うん」
 玄ちゃんに連れられて部室に来た。なんだろう。今日は部活はなかったよね。玄ちゃんがノックをして扉を開ける。
「「お誕生日おめでとう~!」」
 クラッカーの破裂音が鳴り響く。
「ふぇ?」
 顔にかかったクラッカーのリボンを手でよけながら様子を探ると、部屋は紙リボンで飾り付けられ黒板には『宥姉誕生日おめでと!』と書いてある。
「みんな……。あったかあい」

 はっ、はあ。っく、もっと動きやすい服装にするべきだった。私らしからぬ着飾り方をしてしまったことがここで凶と出るとは。旅館にはいなかった、となれば考えられる場所は阿知賀の部室だ。急げ、これ以上の遅れは許されない。

「さって、じゃあそろそろメインにうつろっか」
 その言葉を合図に、みんななにやら奥に向かっていった。
「メイン?」
「プレゼント。みんな宥さんのために用意してきたの」
 ごそごそと包装された箱を取り出しながら灼ちゃんが答える。
「そんな、悪いよぉ」
「そう言わずにもらってくださいよ!」
「そうそう、宥姉にはいつもお世話になってるんだしこれくらいはね」
「……うん、ありがとう」
「あーもうお姉ちゃん泣かないでよ」
 玄ちゃんがハンカチを差し出してくれる。
「だって、こんな風にお祝いしてもらえるの初めてで」
「宥姉の初めてかあ」
「その言い方はなんか違うとおも」

「むっ、なんか今聞き捨てならない言葉が聞こえたような」

「みんなありがとう、こんなにもらっちゃって」
「いえいえ、喜んでもらえてなによりです」
「シズが普通にいいものチョイスしてるの逆に驚いたわ」
「なんだよそれ。憧はいったいわたしをなんだと」
「まあまあ、じゃあプレゼントも済んだことだし次はケーキを」
 瞬間、扉が音を立て激しく開け放たれる。会場の視線が集まる。果たしてそこにいたのは
「……菫、ちゃん?」
「久しぶりだな、宥」

「えっと、弘世さん?」
「ん? 君は阿知賀の大将だったかな」
「はい、高鴨穏乃って言います。ところで弘世さんはどうしてここに」
 会場のみんなが疑問に思っている、けれど聞き出せないことを穏乃が切り出してくれた。
「どうしてって、今日は誕生日だろ?」
「あ、はい」
 当たり前だとばかりに返されてしまいそれ以上は踏み込めない。
「菫ちゃんも来てくれたんだ。みんなが呼んでくれたの?」
「え? ええっと」
 そうなの? と互いに顔を合わせる面々。
「宥、まずは花束を受け取ってくれ」
 そんな外野は気にも留めず豪勢な花束を差し出す菫。
「わあ、きれい。ありがとう」

(え? 誰か呼んだの?)
(私は知らない)
(そもそも仲良かったの知らなかったよ)
(そういえば最近よく連絡とってるらしいけど)
(ていうか弘世さんて白糸台だよね?ってことは)
((東京からこのためだけにここまで来たの?))

「……まずは?」
「ああ、そうなんだ宥。プレゼントはもう一つあって、恥ずかしながらなかなかいいものが見つからなくってそれで遅れてしまったんだが」
 そう言いながら上着に手を掛ける菫。
「そんなに気を使わなくても、来てもらっただけで嬉しいよ。お花ももらったし」
(んん? なんか服脱ぎ始めてるのは気のせいかな)
(いやいや~さすがにそんなことはないでしょないはず)
「今日やっと最高のプレゼントが浮かんだんだ」
 そういいながら上着を脱ごうとしたところで携帯が鳴った。
「む、なんだ今いいところだったのに。すまない少し外に出てくる」
((ふぅ))

「なんだ、照か。悪いが今忙しいんだあとに」
「菫、プレゼント結局なににしたの?」
「そんなの決まっているだろう。私自身だ」
「……」
深いため息が聞こえる。
「それだけか? 切るぞ」
「やめとこう、菫」
「は?」
「いや冷静に考えてやばいから。知り合ってそんなにしない県外の人が誕生日会にいきなり現れるってだけでもかなりやばいのにそのうえ『プレゼントは私』とか言い出したたら通報ものだよ」
「えっ」
「ええ」
またもや深いため息の音がする。
「ともかく、花束渡しただけで十分てことにして帰ってきなさい」
「そうか……」
 確かに言われてみればいきなりそんなことを言われても迷惑な気がする。私は祝うという気持ちだけが先行してしまって宥のことを本当には考えてなかったのか。

「あ、菫ちゃんおかえりなさい」
 会場に戻ると、天使の笑みが迎えてくれた。ああ、こんな私にも慈愛を注いでくれるのか。
「宥、すまない。私はもうこれで帰るよ」
「そんな、ゆっくりしていってくれていいのに」
「まあでもほら宥姉、終電とかもあるだろうしさ」
「あっ、そっか」
 終電……、そういえば何時だっただろうか。アプリで検索を掛けてみる。
「あれ? 終電もう行ってしまってる……?」

「すまない……。祝いに来たはずが逆に迷惑をかけてしまって」
 結局、宥の家に泊めてもらうことになった。客としてではなく友人として。
「いいのいいの、むしろ菫ちゃんがお泊りに遊びに来てくれたみたいで楽しいよ」
「ありがとう」
「東京からここまで来るだけで疲れちゃったでしょ? ゆっくり休んでね。温泉もあるし」
 そういいながら布団を敷く宥。……ん? 待てよここって宥の部屋だよな。もももも、もしかして一緒の部屋で寝るのか!? いやそんな私たちにはまだ早いというか順を追ってというか。
「あ、私少しお手伝いの方してくるね」
「あ、ああ」
 宥のいたって普通な様子に邪な考えは吹き飛んだ。そうだよな、友人をもてなしてくれているだけだよな。また私は間違いを起こすところだった危ない危ない。
 30分ほどして宥が戻ってきた。
「ただいま」
「おかえり」
「お風呂もうお客さんいないし時間的にも私たち使って大丈夫だって。一緒にはいろ?」
 ゆ、ゆううううううううううう。

「どうしたの菫ちゃん、そんなに顔真っ赤にして」
「ナンデモナイヨー」
「へんなの」
 ちょ、ちょっと待ていったいなにが起こっている? え? 宥の家に泊まって、宥と混浴? 明日新幹線脱線とかするのか?
「……菫ちゃんて、お肌きれいだね」
「ひゃい!?」
「身長高くてかっこいいし、美人さんだし」
「そんな、宥の方が」
「ふぇ?」
「宥はかわいいし、私なんかよりよっぽど女性らしいし」
「そ、そう? 菫ちゃんにそう言ってもらえるとなんだか照れるな」
 はにかむ姿がかわいらしい。
「あ、そういえば菫ちゃん」
「ん?」
「お誕生日会のとき言ってたプレゼントって?」
「あ、いやそれはだな」
「なんだったんだろうってずっと気になってたの」
顔を覗き込みながら質問する宥から必死に目を逸らして逃げる。
「ひ、秘密だぁっ」
 そんなことをしていたからか足を滑らせてしまう。そして、
「きゃっ」
 宥を押し倒す形になってしまった。しかも風呂場だから当然裸で。
「す、すまない……」
「う、うん」
「……宥、さっきのプレゼントのことなんだが」
「うん」
「実は」
「すごい音がしたけど大丈夫!? お姉ちゃん」
言おうとしたところで玄さんが入ってきた。
「って、え? ご、ごめんなさああああああああい」
 この状況を見て勘違いしてしまったようだ。無理もない。玄さんはそのまま高速で出て行った。
「あ、行っちゃった」
「……そろそろあがろうか」
「そうだね」
「……宥、プレゼントのことなんだが」
「うん?」
「いつかまた別の機会に話すから、今は待っていてくれるか」
「……うん、わかった」

「で、そのままなにごともなく帰ってきたと」
「ああ、お前のおかげで目が覚めてな」
「いや逆にそれはバカだよ」

カン
ーーー
次回は咲mtg予定
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