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【ヤンデレ】アイのカタチ(後篇)【閲覧注意】

前回と同じく、いや前回よりいろいろひどいので閲覧注意です。

次回はTRPGか咲mtgの更新になると思います。
今月中にあと1~2回は更新したいですね。

ーーー

四章
 あの日以降、私は脱出しようなどとは思わなくなった。私のために、他の誰かまで犠牲になるだなんてそんなことは考えたくなかった。私はそれ以来、宥を怒らせないことだけを考えた。
「菫ちゃん、ご飯だよ」
「ああ、ありがとう」
「体拭いてあげるね」
「……ありがとう」
「新しい本持ってきたよ。今度は変なこと考えちゃだめだからね」
「ああ」

 そんな風に、私はただ宥に従うだけの日々を過ごしていた。宥の方もそうしていれば私にそれ以上なにかをしようと思わなかった。だけれどもここから出ることはできない、考えられない。だから私はいつからか、思考を停止し始めていた。
「菫ちゃん菫ちゃん」
「……ああ」
「菫ちゃん、聞いてる!?」
「……?」
「なんか、最近菫ちゃんて素直になったよね」
「ありガとウ」
「それはいいことなんだけど、それだけじゃなくて」
「どうカしたノか」
「なんていうか、雰囲気が変わったっていうか」
「そうナのカ」
「無感情になったっていうか」
「?」
「端的に言うと、つまらなくなったっていうか」
つマらない?つまらナイって?どういうコとだっけ?÷いことだっケ、ワるイことってことは宥を怒らせた?宥を怒らせた?
「ゆ、宥、待ってくれ、見捨てないでくれ」
「どうしたの?そんなに慌てて」
宥に見捨てられたら
……あれ?どうなるんだっけ?
なんで私はこんなに必死になっているんだっけ
宥に見捨てられたら、誰かが傷つくことに
誰かって、ダれだっけ
ダれカって
亜ア、私ダ
綿シが困るんだ
ダっ手、わタシは宥が女子きなンだかラ

五章
「宥、宥」
「もう菫ちゃんてばくすぐったいってば」
ああ、今日も宥はかわいいな。いい匂いがする。
「ふふ、菫ちゃんたら」
「宥、好きだ宥」
「しょうがないなあ。あ、でももうそろそろ行かないと」
「そんな」
「お昼にまた来るからそれまで待ってて」
「……うん」

宥が去ってしまった。退屈だ。面白くはないが本でも読もうか。
ここには宥しかいない。私には宥しかいない。
でもそれでいい。それがいい。
余計なものがない方が宥だけを感じられるから。
でも、私の気持ちは宥に伝わっているだろうか。むろん全く伝わっていないなんてことはないはずだ。けれどどれだけ伝わっているのだろう。いや、伝わるなんて考えではだめだ。自分から伝えなければ。ならばどうしたら伝わるのだろう。……そうだ。

「ただいま菫ちゃん。いい子にしてた?」
「ああ、だから宥」
「もう、せっかちなんだから」
「違うんだ宥」
「どうしたの?」
「私はもっと宥を感じたいんだ。宥のものになりたいんだ。宥だけのものにしてほしいんだ」
「まあ」
「だから宥、こんな鎖でなくもっと私を束縛してくれ。宥がいないと生きていけないようにしてくれ」
「菫ちゃん……」
「だ、だめか?」
「ううん、うれしい」
「宥」
「菫ちゃん」

こうして私は宥のモノになることができた。

六章
「さて、続いてのニュースです。奈良県で起こった女子高校生監禁の被害者ですが、昨日夕方に意識が戻ったとのことです。監禁されていたことに関して警察が事情聴取したところ『私は望んであそこにいた。こんなところから解放して早くあそこに帰してくれ』と答えており」
怒りをあらわにしながらテレビを切る。菫がそんなことを言うわけがない。言わされているに決まっている。きっとそういわなければ殺されるだとか、他の誰かを殺すだとか脅されて。忌々しい。菫を傷つけたあの女に腹が立って仕方がない。同じ目に合わせてやりたい。
「テル―、大丈夫?」
 そんなことを考えていたから表情がこわばっていたのだろう。淡が心配して声をかけてくれた。
「大丈夫だよ。ただちょっと菫が心配になっただけ。そうだ、今日このあとお見舞いに行かない?」
「うん!」
 後輩に気を使わせちゃだめだよね。私がしっかりしないと。菫のためにも。

「照。私はどうしてここにいるんだ?」
「どうしてって、保護されているんでしょ?」
 なにいってるんだといったように淡が答える。
「保護?どうして?私はそんなことされなきゃいけない覚えはない」
「だって、松実に監禁されて!酷いことされてたんでしょ!?」
 思わず大声を出してしまったところで淡が私の肩に手を置いた。
「テル―、あんまり刺激してつらいことを思い出させちゃだめだよ」
 つい熱くなってしまった。だめだなまた淡に気を使わせちゃった。
「あ、ごめんね。菫。嫌なことを思い出させて」
「嫌な事?嫌なことって、なんだ?」
「それは、だから」
「私は望んであそこにいたんだぞ。嫌なことなんてあるはずがない」
「もういいよ菫。私には隠さなくて。言わされてるんでしょ?大丈夫そのことを言ったりなんてしないから安心して話して」
「……さっきからなにを言ってるんだ?」
 どうも様子がおかしい。
「無理なんてしないで。だって、菫発見されたとき体中が傷だらけだったって」
 警察が菫を保護したときは全身が縛り上げられ、あざだらけになっており、利き手利き足の骨は折られていたと聞いている。もしあの状況がもう少し続いていたら衰弱死していただろうとも。
「お前になにがわかる!」
「っひ」
突然の怒声に淡が驚きの声を上げる。私も声こそださなかったものの内心ではかなり驚いている。菫のこんな声聞いたことがない。今までも怒ることはあったが、こんな感じではなかった。
「お前に!なにも知らないお前になにがわかる!私は幸せだったんだ!私はあのまま死んだとしても、ゲフッゲフッ」
「菫、まだ怪我してるんだからそんな大声出さないで。喉だって痛めてるんだから」
「痛めてる、か。そうだ、私は痛めてるんだ。ああ、この痛みは宥にもらったものなんだ。離れていても宥を感じさせてくれる」
「すみ、れ?」
「ああ、宥。今はどこでどうしてるんだろうか。無能な警察に勘違いされてひどい目に合わされてないだろうか。心配だ。ああ、そのためにも早く説得してここから出なければ」
「菫!」
「ああ、照に淡すまない。せっかくきてもらってなんだが私はやらなくてはいけないことができたからこの辺で」
「ちょっと!」
静止も聞かずに菫は車いすを押して去っていった。

「菫先輩、どうしちゃったんだろうね?」
「わからない」
「あれ、どうかんがえても言わされてるのとは違うよね」
「わからないよ」
「いったい、なにがあったんだろ」
「わからないってば!私が、知りたいよ……」
「……照」
やっぱり、あの女に会う必要がある。そして場合によっては……。

その夜に、菫は病院から姿を消した。

七章
「めんどくさいことになっちゃったなあ」
全く、菫ちゃんだって喜んでるのになんで私を犯罪者扱いするんだろう。監禁なんてしてないのに。あっ、そっか玄ちゃんを殺しちゃったもんねそれはよくなかったなあ。警察の人たちがしつこいからなかなか菫ちゃんに会いに行くこともできないし。
そんなことを考えていると家電量販店のテレビから流れるニュースが目に入った。
「えー昨晩意識を取り戻した奈良県女子高校生監禁事件の被害者ですが、さきほど病室からいなくなってしまったようです。警察は犯人が連れ戻しに来たと考えて捜索を開始しているようです」
 そっか、菫ちゃん自分で出たんだ。なら私が迎えに行ってあげないと。あ、でも警察が探してるんなら危ないか。どうしよう。
 あ、そうか。私たちにしかわからないところで待ち合せればいいよね。

「菫ちゃん、遅いなあ」
奈良は吉野、春には桜が咲き乱れるこの地で松実宥は人を待っていた。自宅や学校では警察が来るだろうと考えて人気の少ない、この時期では人が寄り付かない山奥を選んだのだ。
「多分私のメッセージにも気づいてもらえてるとは思うんだけどなあ」
 ここで待ち合せるにあたって、宥は菫が寄るであろう場所何件かに彼女たちだけにわかるメッセージを記した。ここに菫がくることを願って。そうしてしばらく待っていると、足音が近づいてくる。
「菫ちゃん、待ってたよ」
想い人が来たと思い満面の笑みで出迎えようとする。
「菫じゃなくて、残念だったな」
しかし、彼女の目に映ったのは赤髪の少女だった。

「照ちゃん?どうしたの?」
「それはこちらのセリフだ。どうして菫にあんなことをした。玄さんまで」
「質問に質問で返しちゃいけないんだよ?それに、その質問に対する答えなんてないな。ただそうしたくなったからそうしただけだよ」
悪びれる様子もなくそう答える。
「ふざ、けるな」
その様子に、さきほどは押し殺していた感情が爆発しそうになるのを必死でこらえる。
「それだけであんなひどい仕打ちをしたのか!?菫は心身ともに深い傷を負って、玄さんはその命まで!」
「だからそういってるじゃない。それよりも、今度は照ちゃんの番」
「は?」
寒気だつような低い声でそう投げかけられ、思わず後ずさりしそうになる。
「私は答えたよね、質問に。だから今度は照ちゃんの番。どうしてここに来たの?」
私の五感が告げる。逃げろと。こいつは危険だと。
 だがここで逃げたら菫は。
「震えてるよ、照ちゃん」
ほくそえむ宥。
「わ、私は」
この場にいることを拒否しようとする本能に逆らいながら必死に声を紡ぎだす。
「私は、お前を殺しに来た」
「ふうん、物騒だね」
「物騒?人殺しがなにをいう」
「人殺しだから言ってるんだよ。照ちゃん、人は人を殺してしまったらそれがどんな理由であれもう戻れなくなるんだよ。照ちゃんが菫ちゃんを大切に思うのはわかるけれど、そんな手段で本当にいいのかな?」
「お前だって」
「うん、そうだね。私は玄ちゃんを殺した。この手で。でも、だからこそわかるんだ。こんなんじゃだめだって。私、照ちゃんにはそうなってほしくないの」
「……」
ダメだ、騙されるな。こいつは精神異常者だ、耳を傾けるな。隙を見せたら殺される。
「だからね、照ちゃん。今日はもう帰ってくれないかな。大丈夫、菫ちゃんにはもうなにもしないから」
「信じられるか」
「んー。どうしたらいいのかなあ」
そう困りながら首をかしげる姿はかわいらしくとても狂気の犯罪者とは思えない。
 このままでは懐柔される、その前に
「お前とはいくら話しても無駄だ」
 こいつを殺らなくては。
「できれば穏便に行きたかったんだけどね」
「どの口が言う!」
私はポケットにしまっていたサバイバルナイフを取り出して襲い掛かる。
「悲しいね、照ちゃん。ここでお別れだなんて」
「私はむしろうれしいがな」
喉元めがけて一直線に突き立てる。
血の吹き出す音が、人気のない山奥で静かに残響した。

八章
「ありがとう、菫ちゃん」
「宥のためだ、たいしたことはないさ」
こと切れた宮永照の体からナイフを抜くと菫は笑顔で返した。
「でも、これで菫ちゃんも殺人犯になっちゃったね」
「宥と同じになれるなら悪くない」
「そっか」
ためらいのない返しに宥は思わずほころんだ。
「でも、これでもう二人で生きてくのは難しくなっちゃったね」
「……そうだな」
「菫ちゃん、覚えてるよねこの桜」
「だからこれたんだ」
「うん。今はまだ咲いてないけれど、春には満開の桜が見られるとってもきれいなところなんだって、その時は二人で見にこようねって約束したよね」
「ああ、だから二人で」
「でも、その約束も無理そうだね」
「諦めるな。方法ならいくらでも」
「ううん、無理だよ。逃げてもいつか限界は来る。だから」

「私を殺して」

「は?」
「私を殺して、そしてこの桜の下に植えて」
「なにを言ってるんだ宥」
「梶井基次郎の『桜の樹の下には』って作品知ってる?私あの作品読んだとき、すっごい共感したんだ。ああ、だからあんなに桜はきれいなんだ、って。私、ここの桜の樹となってずっと菫ちゃんとお花見を楽しむから、だから殺して。植えて」
「宥……」
捨てられた子犬のような目で懇願する宥。その言葉に、冗談が混じっているようには感じられなかった
「……わかった」
「ありがとう、菫ちゃん」
「だが、死ぬときは一緒だ」
「!?それはだめ!菫ちゃんはまだ助かれる!」
「助かってどうしろというんだ。体はこんなありさまだ。人も殺してしまった。私にはもう宥しかいないんだ。宥がいない世界なんて生きる価値がない」
「菫ちゃん……」
来世というものがもしあるのなら、こんな形でなくもっと別の形でまたこの少女と恋がしたい。そう願いながら、私たちは互いの左胸に刃を突き立てた。

「玄さん、今年もここの桜はきれいですよ」
「玄、毎年楽しみにしてたもんね」
三人になってしまった阿知賀女子のメンバーは、全員でくるはずだった吉野の山の花見に来ていた。
「まさか、あんな事件が起こるなんてね」
「まだ行方不明のまま、なんだよね。宥姉は」
「うん。早く見つかってほしいね。ちゃんとつぐなって、それからお花見に行きたいな」
「そうだね」
「しっかしすごいなあもう満開!って感じで」
「ほんと、それに今年はどこか妖しげな魅力があるわ。屍体でもうまってるんじゃないかしらってくらい」
「そんな梶井基次郎じゃあるまいし」
「でも、それくらいキレイなのはほんとうだね」

吉野の桜はそのまま、美しく妖しげな魅力で人を惹きつけながら最後の花びらを散らすその瞬間まで盛大に咲き誇っていた。

カン
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